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「AIの民主化」はどこまで民主化できるのか? ~「AI民主化」の理想と現実~


そこで本コラムではailysで行ってきた数々のデータ分析支援の経験を踏まえ、「AIの民主化」が何を意味するのかについてお話します。


「AIの民主化」とは?

総務省の情報通信白書によると、「AIの民主化」とは次のような物と説明されています。「2017年3月に、米国スタンフォード大学教授からGoogleに転じていたAI研究者のフェイ・フェイ・リーが初めて示した概念とされる。具体的には、AIを誰もが使えるようにするというものである。その後、Googleのみならず、様々なICT企業がこの概念を掲げるようになっている。」(出典:総務省令和元年版情報情報通信白書


特に機械学習の分野では、AutoML(自動機械学習)ツールの登場により、AIによるデータ分析で必要不可欠であった統計及びプログラミングの知識が必須でなくなった(あった方が良いのは勿論ですが)ことにより、多くのAutoMLベンダーは自社製品が「AIの民主化」を実現するものであると説明しています。(ailysもその一社であることは認めざるを得ません)


上記からイメージされるのは、データサイエンティストと言ったデータ分析の専門家がいない企業であっても、実際の事業部門の人間が自分でデータを分析し、データドリブンな事業運営を実現している姿ではないでしょうか?


AutoMLによってAI分析が格段にハードルが低くなったのは紛れもない事実ですが、一方でデータサイエンティストと一般のビジネスパーソンの間には知識・経験・技術に圧倒的な差があり、AutoMLはそのギャップを埋めることのできるツールではあるものの、AutoMLを入れたからといって一般のビジネスパーソンがデータサイエンティストになるわけではありません。


このギャップと、自社で導入するAutoMLがそのギャップのどこに位置し、何をどの程度埋めめてくれるのかを正しく認識しないと、高いコストをかけてAutoMLを導入したものの、「期待と異なる」、「使いこなせない」といった問題に直面することになります。


「AIの民主化」の前提条件

上記のような問題を避けるためには、「AIの民主化」にはあまり表立って語られることのないいくつかの前提条件があることを知っておいた方が良いでしょう。


前提条件1:課題設定力

AutoMLは分析作業を劇的に簡単にしてくれますが、何をどう分析すべきかまでは教えてくれません。分析した結果が実際にビジネス改善に役立つかは、分析課題の設定によるのですが、その部分は人間が考える必要があります。

しかしながら、AI分析でどのような課題を解くことができるのか(あるいはどの課題が解決できないのか)については、経験を経て体得されるという側面が強いため、分析が軌道にのるまでに時間がかかる事が多くあります。


前提条件2:データ(変数)準備力

課題設定ができたら次に分析のデータを用意する必要があります。例えばCRMデータからある商品の購入確率の高いユーザーを分析から抽出するといった場合、膨大な項目の中でどの項目を使うのか(結果に無関係な項目が多いと分析に時間がかかる上に精度が落ちる事があります)を決定しなければなりません。さらにデータの項目が決定したあと、どれだけのレコード数を取得するのかも決定する必要があります。(一度に取得できるレコード数に制限がある場合、必要なレコード数が制限以上であればどうのようにしてデータを集めるのかも考える必要があります)


前提条件3:データ(変数)加工力

データの項目が決定し、必要な量のデータを集めたとしても、それでいよいよ分析とはなりません。集めた生データを分析用に再度集計しなければ分析できないケースが実際には多くあります。


例えば、AIを使えば銀行で既に口座を持っている顧客から投資信託を購入する確率が高い顧客を見つけ出すことが可能です。この場合、顧客の属性データと日々の取引情報を分析し、どの項目が投資信託の購入に関連しており、それぞれの要素がどの程度投資信託購入に寄与しているのかをAIが洗い出し、それを予測モデルという形でモデル化します。

一般的には下記のような顧客属性データと取引データが必要となります。


顧客属性データと取引データの例

顧客属性と取引データの例

実際には上記のままではAIによる分析を行うには不十分であり、少なくとも下記のようなデータの加工が必要となります。

  • 投資信託を購入したあるいはしなかったという履歴から「投資信託購入」という「目的変数」を生成する。

  • 年齢も購入に関連する可能性が高いが、属性では生年月日しかないので、生年月日から新たに「年齢」という変数を生成する。

  • 日毎の取引データから分析したい単位でデータを再集計。例えば、月単位で予測をしたいのであれば、顧客毎に月単位での取引データにまとめなおす。

上記のようなデータの処理を行い、下記のようなデータを生成する必要があります。このような前処理を経て初めて効果的で、有意なデータ分析が可能となります。

分析用に前処理されたデータの例

「AIの民主化」を実現するには

「AutoML」の登場により、AIによる予測モデルの作成自体は誰でも簡単にできる時代となりました。一方で、上記でお分かりいただいた通り、予測モデルの作成はデータ分析のプロジェクト全体の一部であり、予測モデルを意味あるものにするには、その前工程である「分析企画」「項目の検討と選択」「分析用データの生成」が必要です。

この3つの要素については、データ分析の専門知識と経験が問われる部分ですので、「AIの民主化」が実現できるかは、実はこの前工程を行える人材がいるかにかかっていると言っても過言ではないでしょう。


人の行う前工程まで自動化した「READY AI」

上述のように「AIの民主化」の実現にはそれを可能とする人材の育成が不可欠でした。株式会社ailysでは、この壁を打破しない限り真の意味での「AIの民主化」は実現しないと考え、新たに開発した新たなAI分析ソリューションが「READY AI」です。


「READY AI」では金融機関で汎用的に使われている分析テーマと分析方法があらかじめ実装されているので、分析したいテーマを選択し、手持ちの顧客属性データと取引データを投入するだけで、後の処理をAIが全自動で行います。今まで避けて通れなかったデータの検討、選択、前処理もテーマに沿って自動的に実施しますので、人が介在する必要がありません。そのためにAIであるとか、データ分析に関する知見や経験を問わず誰でも使いこなせるAI分析を可能にしました。


現時点で「READY AI」が対応できるのは金融機関に限られますが、AI分析に興味があるものの自社で使いこなせるか不安がある、あるいは既にAIを導入したものの、活用があまり進んでいないという課題をお持ちであれば、「READY AI」を一度ご覧になられてはいかがでしょうか?


「READY AI」について知るには

現在金融機関様向けに10社限定でベータ版を無償提供する計画です。ご興味があれば是非エントリーお願いします。(フォームはエントリーのみになります。ベータ版の提供をお約束するものではありませんのでご注意下さい)













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